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追加変更工事代金の請求における3つのポイントについて弁護士が解説!

建設工事において、追加変更工事代金の未払いは深刻な経営課題です。「追加工事をしたのに代金が支払われない」「当初契約に含まれていると主張された」といった相談が後を絶ちません。本記事では、発注者との紛争を防ぎ、追加変更工事代金を確実に回収するための実務的なポイントを、工事の各段階ごとに解説します。

追加変更工事代金トラブルの3つの争点

追加変更工事代金を請求する際、発注者との間で争いになるポイントは主に3つあります。

追加変更工事なのか否か

発注者側は「それは本体工事に含まれている」と主張することが多く、当初契約の範囲外であることを示す必要があります。

追加変更工事を施工したのか否か

実際に工事を行ったことを客観的な証拠で示さなければなりません。

追加変更工事代金の額

工事を行ったことが認められても、代金額について合意がない場合、適切な金額を主張立証する必要があります。
これらの争点を意識し、各段階で適切な対応をすることが、代金回収の成否を分けます。

契約締結交渉段階での注意点

指値への適切な対応方法

指値とは、元請負人が力関係を利用して、下請負人との協議に応じることなく、原価に満たない額で下請代金を一方的に決定する行為です。建設業法上は禁止されていますが、実務上は依然として発生しています。
指値に対しては、唯々諾々と受け入れるのではなく、粘り強く交渉することが重要です。最終的に指定された額で契約を締結することになるとしても、交渉過程で「この金額では厳しい」「採算が取れない」といった意見を明確に伝え、記録に残しておくことで、後日の紛争において有利な材料となります。

見積り落としを防ぐポイント

契約締結交渉段階では、見積り落としに細心の注意を払う必要があります。見積りから漏れた項目について、後日「追加変更工事である」と主張しても、発注者側から「当初から見積りに含むべきだった」と反論される可能性が高くなります。
仕様書や図面を入念に確認し、想定される工事項目をすべて見積りに反映させることが、後のトラブルを防ぐ第一歩です。

仕様書の確認が重要な理由

仕様書は、どこまでが本体工事に含まれるかを判断する重要な基準となります。仕様書の記載が不明瞭な場合、後日「この工事は仕様書に含まれていた」と主張される危険があります。
契約締結前に仕様書の内容を詳細に確認し、不明瞭な点や曖昧な表現については、発注者に質問して明確化しておくことが必要です。その際のやり取りもメールや書面で記録を残しておくべきです。

着工後に押さえるべき3つの証明ポイント

追加変更工事であることの証明

着工後に仕様変更が生じた場合は、その都度、変更内容を明確に指摘し、記録に残すことが極めて重要です。
最も効果的な方法は、定例会議の議事録やメールで変更内容を明記することです。議事録には「~の件」という曖昧な表現ではなく、「○○の仕様変更により、△△の追加工事が必要となった。これについて発注者から了承を得た」といった具体的な内容を記載します。
作成した議事録は社内で回覧するだけでなく、発注者にも送付しておくことが重要です。発注者から異議が出なければ、内容について認めたと主張しやすくなります。
実際の訴訟では、会議の日時、参加者、議事録の確認者が明記された資料や、質疑・確認事項に対して明確に回答内容が記載された書面が、有力な証拠として採用されています。また、「変更による増減金額」を記載する欄があらかじめ用意されている書式を使用することも効果的です。

追加変更工事を施工したことの証明

追加変更工事を行う際は、必ず事前に発注者へ通知することが原則です。口頭での合意だけでは後日「そのような工事は依頼していない」と争われる可能性があります。
施工中は工事の進捗状況を写真で記録し、どのような工事を行ったかを客観的に証明できるようにしておきます。
そして、竣工時には追加変更工事を反映させた竣工図を作成し、発注者に送付して承諾を取得することが非常に重要です。竣工図は発注者が竣工当時に確認しているため、裁判においても信用性の高い証拠となります。「この工事は施工していない」という主張を封じる強力な武器となるのです。

追加変更工事代金の額の確定

追加変更工事の代金額については、できる限り事前に発注者との間で合意を得ておくことが理想です。
しかし、工事の性質上、事前に正確な金額を確定することが難しい場合もあります。そのような場合でも、請負人側から発注者に対して追加変更工事代金の見積額を提示しておくことが重要です。
法律上、商人が営業の範囲内において他人のために行為をした場合は、相当な報酬を請求することができるという規定がありますが、この権利だけでは万能ではありません。事前に見積額を提示し、発注者がそれに対して明確な異議を述べなかった場合、その金額の妥当性を主張する根拠となり得ます。

竣工後の交渉で知っておくべきこと

竣工後の交渉は、一般的に難航します。すでに工事が完成しているため、「工事は竣工しているのだから、支払わなくても問題はない」という心理が働くためです。
竣工後に追加変更工事代金についての交渉を行う際は、これまでに作成した議事録、メール、写真、竣工図などの証拠資料を整理し、体系的に主張を組み立てることが必要です。
なお、交渉の際に録音することは、基本的には相手方の承諾を取らなくても、証拠として使用することが可能です。重要な交渉の場面では、記録を残すことを検討すべきです。

元請けへの期待と現実

下請負人としては、元請負人が施主や元請に対する発注者に対して自社の主張を代弁してくれることを期待することがあります。
確かに、元請が価格交渉のために、下請けの主張のとおりに施主等へ主張することはよくあります。しかし、これは追加変更工事代金を獲得するための交渉戦術であり、そのことを裁判所も理解しています。元請が施主等に対して下請けの主張どおりの主張をしたからといって、それだけで勝てるわけではありません。
下請負人自身が、追加変更工事であること、施工したこと、代金額の妥当性について、独自に証拠を準備しておくことが不可欠です.

弁護士への早期相談の重要性

追加変更工事代金を確実に回収するためには、次の3点を常に意識することが重要です。
• 追加変更工事であること(本体工事に含まれないこと)
• 追加変更工事を施工したこと
• 追加変更工事の代金額
これらを証明するための資料を、工事の各段階で計画的に作成・保管しておく必要があります。
交渉で解決しなければ法的措置へ移行する必要があるため、早い段階から弁護士に相談することをお勧めします。特定の弁護士と継続的に相談できる関係を構築しておくことで、どのような資料があれば裁判所に誤解なく意図が伝わるかについても助言を得られますし、精神的にも安心して本来業務に集中できます。
未払い代金の問題でお悩みの建設業者様は、ぜひ専門家にご相談ください。