請負工事が完了したので工事代金を請求したところ、発注者が様々な理由を付けて支払いを拒絶することがあります。発注者が支払いを拒絶する理由としては、単に支払うだけの資力がない場合、工事に不備があると主張する場合、請負業者が追加変更工事代金を請求したところ、追加変更工事ではないとか、あるいは追加変更工事代金の額について争いがあるなどの場合があります。
ここでは、請負業者側の立場に立って、工事代金の支払いを拒絶された場合について見ていきます。
支払うだけの資力がない場合
支払うだけの資力がないために支払いができないと発注者が主張する場合があります。このような場合、その発注者の主張が事実かどうかは分かりませんが、法的には仮差押えや訴訟を提起するといった選択肢があります。
仮差押えをするためには発注者の財産についての情報の把握が必要です。財産としては、典型的には銀行預金や不動産です。また、発注者が元請業者であれば、元請業者の発注者に対する請負代金がまだ支払われていないというケースもあり、この場合は請負代金債権も一つの財産ということになります。発注者の財産についての情報を把握できているのであれば、仮差押えは有力な手段になり得ます。仮差押えのメリットは、訴訟に比べて迅速な解決が見込めることです。仮差押命令は、申し立ててから1~2週間程度で発令され、十分な財産を仮差押えできれば、それを契機に交渉による解決も期待できます。
工事に不備があると主張する場合
発注者が工事に不備があると主張して工事代金の支払いを拒絶する場合があります。工事の不備には、契約で定められた仕様通りになっていない、建築基準法等の建築法規に違反しているといったケースがあります。まずは発注者に対して、どの部分の施工が、どのような理由で不備に当たるのかを確認しましょう。工事に不備があるかどうかについては、発注者側で業者に依頼して報告書形式でまとめているような場合もありますので、そのような場合はその報告書を閲覧させてもらいましょう。
また、工事に不備があるかどうかについては、請負契約においてどのような施工をすると定められていたかも重要です。施工すべき内容が分からなければ、工事に不備があるかどうかもはっきりしないためです。
そのうえで、工事に不備がないと判断できるのであれば、発注者に対してその判断の根拠を主張して工事代金の支払いを求めることになります。それでも支払わなければ、やはり仮差押えや訴訟提起が視野に入ってきます。
追加変更工事に関して争いがある場合
追加変更工事を巡ってはトラブルになるケースが多くあります。典型的には追加変更工事なのか、それとも当初の請負契約の範囲内の工事なのか、追加変更工事に当たるとしても実際に施工したのか否か、追加変更工事の代金額について争いになる場合があります。
追加変更工事に関するトラブルについては、当初の請負契約で明確に仕様や施工内容を定めておくこと、見積落としが生じないよう留意すること、施工途中における発注者都合での追加変更工事の要請については記録化しておくこと、追加変更工事の代金の額については竣工後ではなく施工途中から十分に協議することなどが大切です。
工事代金の支払いを拒絶された場合のポイント
工事代金の支払いを拒絶された場合のポイントについては以上となります。
整理すると、単に発注者に資力がないのであれば仮差押えができるかをまず検討しましょう。発注者が、工事に不備があると主張している場合は、それが不備といえるのかどうか、当初の請負契約における合意内容を踏まえて判断し、不備ではないのであれば法的措置を取ることを選択肢に入れましょう。追加変更工事に関して争いがある場合は、追加変更工事であることや施工したこと、またその代金の額について立証できるかを検討しましょう。
弁護士に依頼するメリット
発注者が工事代金の支払いを拒絶した場合、その主張が妥当かどうかを検証したうえで、法的措置を視野に入れて対応していく必要があります。そのためには、この種の事案への対応経験が豊富な弁護士に相談することを推奨します。
まとめ
ここでは発注者が工事代金の支払いを拒絶した場合の、請負業者としての対応についてご説明しました。
実際に工事代金の支払いを拒絶された場合、ここでご説明した点を意識して対応されてください。
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