弁護士が不動産・建築分野の法務を支援

賃料増額交渉・請求について弁護士が解説

不動産オーナーにとって、賃料の増額を行って収益を増やすのは不動産の利活用の重要な課題です。ただし、賃借人に対して賃料の増額を交渉する場合は、借地借家法上の賃料増額請求権を考慮したうえで行う必要があります。
ここでは、不動産オーナーの立場に立って、賃料増額請求について見ていきます。

賃料増額請求の基本

最初に、賃料増額請求の基本について説明します。
借地借家法では、賃料の増額請求権があると定められています。これらの請求権は権利ですので、種々の事情から賃料が不相当であるのであれば、賃料増額請求をした時点から賃料が増額されます。もちろん、賃借人は賃料増額請求を受けても簡単にはそれに応じないでしょうが、権利である以上は、賃借人が応じるかどうかは関係がありません。賃借人が応じない場合、賃貸人は賃料増額請求の調停を申し立て、調停が成立しなければ訴訟を提起することになります。そのうえで、実際に賃料が不相当であるのであれば、賃料が増額される旨の判決が出ます。
ここで注意が必要なのが、その賃料増額の判決の効力は、賃料増額請求をした時点から効力を有するということです。例えば、賃料増額請求をしてから2年後に判決が確定したとして、その判決による賃料増額の効力は2年前の賃料増額請求をした時点に遡及するということになります。
なお、賃料増額請求を受けた賃借人は、通常、現行の賃料を支払いつつ、賃料増額請求の調停や訴訟に対応します。増額を認める判決が出た場合、賃料増額請求を受けた時点からの増額分の賃料を支払うことになりますが、その際は年利10%の利息を付して支払うというのが借地借家法上のルールです。
このように、賃料増額を認める判決の効力は賃料増額をした時点に遡及することになりますので、賃貸人としては、「お願い」に留まるのではなく賃料増額の「請求」であることを明確にしておき、かつ、記録化しておくことが重要です。

賃料増額請求で気を付けるべきこと

賃料増額請求の基本は以上のとおりですが、賃料増額請求で気を付けるべきことについて説明していきます。
賃料増額請求においては、判決になった場合にどの程度の賃料増額が見込まれるのか、予測を立てることが大切です。賃料増額請求の訴訟では、賃料についての鑑定を行うのが通常です。そこで、任意での交渉段階でも鑑定を行ったうえで、賃借人にその結果を示しつつ交渉することも選択肢となります。
次に、賃料の増額交渉のみ行い、調停の申立てに至らない場合についてです。増額交渉を行った結果、若干の増額を獲得できたため賃料増額の合意をすることがあります。ただ、このような合意については慎重になる必要があります。賃料増額請求訴訟では、直近で賃料合意をした時点と、賃料増額請求がなされた時点とを比較して賃料が不相当となっているかどうかを判断します。したがって、直近で賃料合意をしたのはいつかが重要となります。この時、若干の増額を獲得できたため賃料増額の合意をすると、その時点が直近で賃料合意をした時点となります。逆に、若干の増額では満足できなかったため、あえて合意せずにいたとすると、直近で賃料合意した時点は過去に遡ることになります。つまり、賃料の増額交渉において合意するかどうかで、その後、賃料増額請求をした際の直近合意時点が変動するということです。不動産オーナーとしては、賃料増額の交渉をした際、若干の増額が獲得できたとしてもそれで合意するかどうかは、鑑定を行うことも視野に入れたうえで慎重に検討する必要があるでしょう。

賃料増額請求のポイント

賃料増額請求のポイントは以上のとおりです。
ここでは、賃料増額請求の法律上の効力がいつから発生するか、そのためにどのようなアクションを取るべきか、鑑定及び直近合意時点の重要性について説明しました。

弁護士に依頼するメリット

賃料増額請求をするに当たっては、借地借家法上のルールや鑑定も視野に入れながら進めていく必要があります。そのためには、この種の事案への対応経験が豊富な弁護士に相談することを推奨します。

まとめ

ここでは賃料増額請求についてオーナー目線でご説明しました。
実際に賃料増額請求の進め方や戦略で迷った場合、ここでご説明した点を意識して対応されてください。

お問い合わせ

メールまたはお電話でお問い合わせください。
なお、個人の方からのお問い合わせは受け付けておりません。